▹ 矯正治療後も歯は一生動き続けます
歯は個人差はあるものの永久的に全く同じ場所にとどまっていることはありません。これは、歯と顎(あご)の骨をつないでいる歯根膜の性質からも容易に想像できます。歯根膜はクッションの役割を果たす組織で再生・恒常性維持機構も有しています。矯正治療はこの歯根膜の働きをうまく利用して、歯を動かします。言い換えますと、持続する力が加わってしまうと歯は動いてします。さらに土台の顎(あご)の骨も改造が行われているので、歯並びの状態は一生同じ形であるわけではありません。つまり、程度の差はありますが、「歯は一生動き続ける」という認識が必要です。
▹ 後戻りしやすい矯正治療とは
矯正科医はもちろん、このような事実は認識していますが、正直申しますと長期的に歯列を安定させる方法はまだ確立されていません。ただし、歯をあまりにも急いで配列する「スピード矯正」や歯の土台である顎(あご)の骨の大きさを無視した歯の配列を行ったり、歯のデコボコが大きいにも関わらず「歯を抜かない矯正治療」を行うと後戻りをしやすいことは分かっています。今後、遺伝子治療や新薬などで、歯の動くスピードを速くする技術や顎(あご)の骨の大きさを変える研究が成熟するまでは難しいでしょう。巷ではこれらの生体の秩序を無視した矯正治療が流行っていないでしょうか?
▹ 長期安定のために
ここまでご覧になられたかたは矯正治療で長期安定させるのは困難であるとご理解していただけたと存じます。ちなみにインターネットで矯正歯科のサイトを調べてみても長期の安定性に言及しているサイトはほとんどありません。しかし、昔に矯正治療を受けたものの、歯並びが動いてきて困っている方々が多いのも事実です。最近の矯正学会の見解ではできるかぎり固定する期間を長くするのが望ましいとされています。そのため、当院では矯正治療の長期安定に真摯に取り組んでおります。
当院では、長期安定のために以下の配慮をいたします。
・無理な歯の移動(スペースがない場所への強引な移動)は極力回避いたします
・歯の上部(歯冠)の整列だけでなく、歯の下部(歯根)も考慮した整列を行います
・保定期間を長く設定しております(従来は2~3年、最終的には患者さんの判断)
・保定装置を長期間装着しても負担にならない細いワイヤーの固定式装置を提供いたします
・取り外しできる装置も用意することが可能です(固定装置よりも不安定)
・マウスピース型保定装置を併用し、ホームホワイトニングも可能
当院の薄くて目立たない後戻り防止装置 | |
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当院では審美的で違和感のない保定後戻り装置を独自に研究し、上下顎ともに固定的な保定装置を装着します。この裏側から装着する方法は術者の技術が必要ですが、普段から裏側矯正で慣れているため問題無く装着できます。最近は顕微鏡下(マイクロスコープ)の高倍率で装着するなど、常に進化した方法を提供しております。 |