▹ 全体矯正は負担が大きくためらうのですが・・・
患者さんが矯正治療をするかどうか、ためらわれる理由として、初診相談時に問題に挙がる理由の多くが、治療期間と治療費です。歯のデコボコが軽度な患者さんは、「1本の歯しか気にならないのに、全部の歯に装置をつけたくない」「治療期間も治療費もそんなにかかるのは嫌です」と考えているかたもいらっしゃいます。私も治療を受ける立場であれば、そう思うかもしれません。ただし、長期安定の項目でも触れましたが、歯は常に同じ場所にとどまっているわけではないので、一本の歯のみを動かすような「部分矯正」は「全体矯正」よりも難しい治療になることもあります。(支えとする歯も動いてしまうため)。
▹ 矯正治療を出来ない人はどうするのか?
「それでは矯正治療は希望しません」となったかたはどうするのでしょうか? おそらく、悩まれた後に審美歯科などで歯を削って、セラミックなど人工の歯を入れる方が多いような気がします? そのほうが短時間の治療で済ませることができます。しかし、歯の自然な美しさの点では天然歯に優るものはありませんし、歯を大きく削った時点から、歯を喪失するカウントダウンが始まります(現在の歯科技術では、残念ながら、確実に長期間維持できる人工修復物はありません)。さらに、何度も再製作となるため長期的にみるとコストも高くなります。
▹ 大きな凸凹でも部分矯正で治療可能です
このような経緯と、部分矯正を希望される患者さんの増加をふまえ、矯正の全顎的な治療を望まれない方を対象に、そのメリットとデメリットを十分ご理解していただいた上で、「部分矯正」も積極的に行っております。技術的には、裏側矯正の技術を応用するなどして、少数の歯のみを効率的に動かすことも可能となってきました。治療期間は約5か月から12か月となり、治療費は症例により異なります。また、部分矯正から全体矯正への移行も可能です。その場合はそれまでの費用を割引いて治療を受けることができます。かけがえのない健康な歯を大きく削って、歯の寿命を縮める前にお気軽にご相談ください。
▹ 当院の部分矯正は95%以上が裏側矯正です
前述したように「部分矯正」は支える歯が少ないため、全体矯正よりも技術的には難しくなります。この課題を解決するために当院では支える歯が少なくても矯正力がかかりやすい「裏側矯正」の特徴を最大限生かして部分矯正を行います。そのため必然的に部分矯正の95%以上を裏側矯正で行っております。この割合は年々多くなっております。仕上がりも前歯部に関しては全体矯正と遜色ないレベルで治療可能です。また、表側矯正よりも効率的な後方移動が可能となるため、非抜歯の部分矯正でも歯が前方に出ることが抑制することができます。当院の標準的な部分矯正は前歯部の8本に装置を装着します。これは長年試行錯誤して決定した本数です。この本数であればどのような凸凹にも対処できる自信があります。また、他の歯が動かない様にするために後方歯に補助的な装置を装着することがあります(追加費用はありません)。
部分矯正/治療例1 | |
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重度の凸凹にもかかわらず非抜歯かつ部分矯正で治療した症例、前方への突出も大きく改善。前歯部8本に矯正用ブラケット装着、後方歯には歯の移動を抑えるため補助装置を無償で装着。【年齢】26才【主訴】上顎2番目の歯が内側にズレて暗く見える【治療内容】上顎裏側ブラケット部分的使用、非抜歯、治療期間約1年、治療費用48万円【治療上のリスクと副作用】 装置装着後、一時的に発音障害、摂食障害が発生する可能性があります。虫歯、歯周病、歯根吸収、歯肉退縮などが発生する可能性があります。また、個々の患者さんの状態等により治療結果や治療期間は異なります。 |
部分矯正/治療例2 | |
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重度の上顎前突であったが非抜歯かつ部分矯正で治療した症例。この症例は裏側矯正の強力な後方移動作用を示している。前歯部8本に矯正用ブラケット装着、後方歯には歯の移動を抑えるため補助装置を無償で装着。【年齢】20才【主訴】上の歯が前に出て唇が閉じにくい【治療内容】上顎裏側ブラケット部分的使用、治療期間約1年、非抜歯、治療費用48万円【治療上のリスクと副作用】 装置装着後、一時的に発音障害、摂食障害が発生する可能性があります。虫歯、歯周病、歯根吸収、歯肉退縮などが発生する可能性があります。また、個々の患者さんの状態等により治療結果や治療期間は異なります。 |